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遷ろいゆく関心事を書き留めていく

『はなぼん ~わくわく演出マネジメント』 図書館本の読書メモ vol.1

はなぼん ~わくわく演出マネジメント

はなぼん ~わくわく演出マネジメント

フジ、NHK、TBS、日テレなどで番組演出を手がけてきた演出家の花井裕一郎さんが、小布施町立図書館「まちとしょテラソ」の館長となり、さまざまな工夫を重ねて運営した末、「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー2011」大賞を受賞した物語が綴られています。

小布施町の新しい図書館は、館長が公募されるとともに、設計者の最終選考も公開プレゼンテーションで決められたそうです。ファイナリストに残った建築家は、隈研吾さん、新居千秋さん、藤原孝一さん、古谷誠章さん、伊藤豊雄さんというすごい顔ぶれ。グランプリとなった古谷誠章さん(早大教授、ナスカ一級建築士事務所代表)のプレゼンでの「談話」が紹介されています。

小布施駅前に、現状よりももっと魅力的な雰囲気を醸成したい。この土地にないもの、欠けているものを導入したい。その一つとして、もっと緑を増やしたい。もう一つ、人々が居心地よく滞在するための場所に育てたい。」 (p.84)

静かに本を読んだり勉強したりするための施設という従来の図書館のイメージからは、到底想像できない思いをもって設計されたことが分かります。

「駅前のエリアに不足している緑をもっと広範囲に育てて、『森の中の図書館』をつくりたい。図書館周辺に点在する、町役場や小学校を含めたさまざまな施設を、緑でつなぐ。『緑のベルトをつくる』というイメージだ。小学校校庭に立つ音楽堂周辺の桜並木や杉林の緑を図書館に取り込みたい。」 (p.84)

これは素晴らしい情景だと思いました。図書館を親子で楽しめる遊び場のひとつとして活用したいと思っている私にとっては、理想形に近い感じです。

「人口の100倍以上の人が訪れる小布施町。図書館が、来訪者と住民が出会うきっかけの場となり、できれば住民のみなさんが案内役になることで、内容のある交流がどんどん生まれる場になるといいなと思います。」古谷さんがそう話を結んだ瞬間、会場から拍手が沸き起こっていた。  (p.85)

私も拍手!このコンセプトが実現されれば、「図書館を目的地の一つにした旅行」が成り立ちます。子どもと一緒に家族で小布施を訪れ、図書館を起点に地域住民の人々と交流しながら、小布施というまちを知る、そんな旅行ができそうです。

 

また、建築だけでなく、運営面でも「まちとしょテラソ」に行ってみたくなる(究極的には、小布施に住んでみたくなる)工夫やエピソードが多数紹介されています。前館長が演出家という職業のプロフェッショナルだからこそ発想できたものでしょうね。

花井さんは新図書館の理念である「交流と創造を楽しむ、文化の拠点」を、子どもにもわかりやすく伝えられるように、「わくわく」という言葉をキーワードにして図書館づくりに取り組みます。その結果、あるエピソードをきっかけにして、「まちとしょテラソ」に飲食ができる空間を生み出すことにつながります。

直接のきっかけは、ある子育て中の女性の意見だった。彼女は、「うちの子は図書館が大好きで、一日いても飽きない。けれどもお弁当持参で図書館へ行かせても、いざ食事をするときには外に出なくてはいけない。そこで館内にお弁当などを食べるコーナーを作ってほしい」と要望した。 (p.143)

この意見をもとに、コンシェルジュカウンター横にカフェコーナーがつくられたそうです。そうですよね、子どもが一人でお弁当持参で図書館にいくケースでも、親子で一緒に行く場合でも、やっぱり飲食ができる場所が確保されているっていうのは大事ですよね。

 

ライブラリー・オブ・ザ・イヤー2011」を受賞した「まちとしょテラソ」ですが、今後どんなふうに成長していくのか、という展望についても、とても共感できることが綴られています。

「次はどの賞をめざしているのか」と、時折尋ねられることがあった。しかし僕はその後、賞をもらうことはまったく考えなかった。日本一の図書館に選ばれたのだから、これ以上、何の賞が必要だろう。
やるとしたら、「まちとしょテラソ」を利用している人たちが賞をもらうためのお手伝いをしていきたいと思った。「賞」でなくてもいい、図書館を利用することから生まれた成果が、なんらかの評価の対象になればうれしいと思う。
利用者が、それぞれの暮らしの舞台で輝くための応援ができたなら、とてもうれしいことだ。それが、図書館運営の質が向上し進化している証拠だと考えている。 (p.193-194)

「よい図書館」の条件を考えるにあたって、とても大事なことだと思いました。蔵書数、利用者数、貸出数、座席数、広さ、といった数値や、カフェや売店の有無、開館時間、コンシェルジュサービス、無線LAN、児童コーナー、といった利用者にとっての快適さ・使いやすさも、図書館を評価する上ではたしかに重要な要素です。しかし、その図書館を利用する人々が何を得て、何を実現したか、という視点も忘れてはいけなさそうです。

 

 

*** あとがき ***

図書館クエストと並行して、「図書館」本の読書メモをつけていくにあたり、とりあえず最近出版された本を選んでみましたが、図書館に置いてある比較的古めの「図書館」本も、面白そうなものがたくさんあり、図書館クエストの楽しみの一つになりそうです。